最凶の敵

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結論から申しますと、私個人にとって、最悪でかつ、もっとも厄介なヤツは、
ズバリ、毛虫です。
ただの毛虫じゃなく、毒を持っている種類のドクガの幼虫です。
コイツにやられると大変な事になります。
人によっては大したことないらしいですが、聞くところによるとアレルギーを
持っているかどうかで症状が重くなると、言う人もおられます。
まあ、どっちにしても、嫌な奴には変わりません。
では、そろそろ身の毛もよだつ、思い出すだけで体が痒くなってくる
ヤツとの戦いのエピソードを、お話致します。
と言っても、やられっぱなしですけどね。
今回のお話の舞台になった現場は、特に印象深い現場でした。
少々、話が長くなりますが、色々と勉強になったことが多かった現場ですので
すべてをお話したいと思います。
前置きがながかったです、では
現場は、都内にほど近い、環八の手前ぐらいの場所でした。
実は、このお宅にお伺いするのは2度目です。
最初に伺ったのは10年程前で、工務店の下請けとして工事させて頂きました。
つまり、今回は、2回目の塗替えでした。(当店として)
住宅は、ごく普通の大きさで、木造2階建て、築25年といったところでしょうか。
今回は、木部と鉄部だけの塗替え工事の依頼です。
できれば、仮設足場を設置したいところだったんですが
予算の都合もあり、2回目の依頼でもあったので、梯子と脚立を使っての
施工と致しました。
季節は初夏でした。
御施主様のご夫婦は、とても仲むつまじいお二人で、お子さんは三人の娘さんです。
娘さんたちは、すでにそれぞれ嫁がれていました。ご主人のお仕事は弁護士だそうです。
お二人ともとてもいい方達で、何事もなく、初日は終わりました。

ところで、例の毛虫での被害ですが、今回は特にひどくやられました。
椿の木やサザンカなどに付くのですが、この時まだ居る事に気づいていません。
ただ、人が通って歩く高さにはいなかったですし、その高さのものは
植木屋さんが駆除してたのかいなかったです。
つまり、実は高い位置にはいたんです。
仕事が少々甘かった時期でしたし、気持ちも焦り気味だったのでしょう。
まさに、周りが見えていない状態です。
さて、作業は二つの脚立に歩み板を渡して、鼻隠し板(雨樋が打ち付けてある板)から
はじめました。ケレンといって、塗装の前に行う下地処理、いわゆる掃除ですね。
その時、丁度歩み板に乗っている私の頭の後ろにチャドドク蛾
の毛虫がいる木があったのです。建物本体のすぐそばに植木が植えてある状況です。
庭自体は狭いのでいたしかたないのですし、植木が多いお宅はさほど
珍しくもないので気にもとめませんでした。
頭タオルをかぶっての作業スタイルですが、最初はそれに毛が付いたのでしょう、
そのうち、汗ばんだ首筋に移ってくるのは間もなくだったに違いありません。
ケレンしてホコリや汗で首の辺りが痒くなり、無意識のうちに手袋(軍手)をしたまま、 
掻いてしまいます。
夏ももう間近のこの時期、気温もあがり、額にも汗をかきます。
毒蛾の毒針毛が付いたのを知らずに手袋で額を拭ったりします。
ただ、ヤブ蚊も多い時期なので、てっきり痒みは蚊に刺されたものと思いこみ、
半日、夢中で作業をしてしまいました。毛虫の被害にあったのに気づいたのは、
時すでに遅く、首、脇の下、お腹は言うに及ばず、顔面全体が皮膚炎症を
起こしており、チクチクとした猛烈な痒みです。
もう、仕事どころではない状態です。とにかく、一刻も自宅に戻り早くシャワーを浴びて、
風呂に入り、汗とホコリを流さなくては。
全身にじんましんがでてなどひどいアレルギー症状がでる前に
軟膏などを塗る治療をしなくてはなりません。
道具を片づけて、この日は引き上げることにしました。
事の仔細を奥様に伝えると、たいそう御心配してくださり、ご自宅の植木に付いていた
毛虫によるものだったので、大変気の毒がっておられました。塗り薬のキンカンを
持ってきてくれましたが、さすがに、目にしみて顔には塗れませんでした。
次の日、ダメージはかなり残るものの、休むわけにはいかず、現場に向かいました。
到着して間もなく、奥様のご提案で庭にある植木の毛虫のいる枝を切る事にしました。
そこで、昨日の敵討ちよろしく‘バッサ、バッサ'と切りました。
ところが、ちょっと勢いあまって切りすぎたらしいです。
よけいな植木の枝まで切り落としたらしいです。「マズイ」です。
奥様はとても、不機嫌なご様子です。
実は、このお宅の方々はご自分で庭の手入れはしないけど、
庭木はたいそう大切にしているらしいのです。
手入れは植木屋さんにお任せらしいです。
桃の花の枝をきってしまったのがいけなかった。大失敗です。
こっぴどく、叱責されました。切ってしまった枝なので、元にもどすことなどできず、
ましてや、弁償もできません。ひたすら平謝りでした。
「へこみました―。」体じゅうシクシク痒いし、四十すぎて人に叱られると
よけいにへこみます。
だいぶ以前にも何処でしたか、枝を切りすぎて叱られたお宅があったんですが、
「勝手に切らないで、よく家の者に聞いてから切らないとダメよ。
植木を大切にしているお客さんは沢山いるんだから。」と注意されたのを
覚えております。それなのに、10年たって
また、性懲りもなくやってしまいました。反省です。
さて、仕事の方はその後、程なくして完了しまして一安心です。
ところで、思い出したんですが以前に叱られたお宅ですが、
実は、なんと同じ奥様だったんですね。
つまり、2回同じ人に同じ事で叱られたんです。
ダメですねー、ダッセーなぁ俺。